――まず、柴さんがこの企画に最初に惹かれたのはどこだったんですか?
柴:土井さんと龍さんですね。普段僕がやってる中では絶対に一緒にやれないような世代の方なので。
――普段はよく知っている俳優さんとやられることが多いと思うのですが、そこに不安はなかったんですか?
柴:いや、かなり不安はありました。でもお二人が出てらっしゃる舞台を観て面白かったし、不安もありましたけど、楽しみなところもいっぱいあるなと思って。
――実際に稽古が始まって、これまでの現場との違いは感じますか?
柴:最初に土井さんから「とりあえずまず、せりふをちゃんと入れさせてほしい」と言われて、最初は読み合せの稽古が続いたんです。その様子を見てたら、うまくやりとりが成立すればそれだけで面白いなと思って。あんまりごちゃごちゃ言ってぎゅうぎゅうにするよりも、特にこのお二人は好きにやってもらったほうが面白いなと思ったので、二人の流れを止めずに、波に乗れてる状態を維持してもらうようにしようと。この間の『わが星』もそうだったんですけど、最近、あんまりごちゃごちゃいわないでもいいかなと思ってるんです。
――改訂版の台本は早く上がっていたんですか?
柴:9月の頭にはできてたのかな。稽古が始まる前に2回くらい読み合せをして、その時配役を決めました。
――オリザさんから作品について何かお話は?
柴:いえ、特には。好きにやってもらって構わないって言われましたけど……。
――改訂版の台本は、初演とどのくらい違っているんですか?
柴:この間、改めて重ね合わせるように読んだら、だいぶ違ってましたね。話してる内容は一緒だったりするんだけど、書いてある内容も言葉も、やっぱり20年前の台本だなって感じがします。現代口語演劇に至る前の作品って感じで、オリザさんの作品の中でも言葉が硬くて長くて、戯曲のせりふとしては成立してるのかもしれないけど、しゃべる言葉としてはすごくぎこちない言葉が使われていたりして新鮮でした(笑)。
――オリザさんが書き直した経緯は、何か聞いてますか?
柴:いえ。でもその時代に合わせて書いたものだから、それをいまの時代、そのままやってもあまりリアリティーがないっていうか、切迫感や時代性が足りないと思ったんじゃないですかね、特にその部分が変わっているので。
――作品に柴さんが何か書き足したりすることはありますか?
柴:基本的にはないです。作品の頭の部分に何かを付け加えることはあるかなと思いますが、作品内容とかせりふにどうこうするってことはあまり考えてないです。
――今回は実際にスープをつくりながら会話するそうですね。演出プランは早い段階から決まっていたんでしょうか。
柴:ええ、実はタイトルを聞いた段階から(笑)。もともと料理をつくりながらの芝居をいつかやりたいと思ってたんですけど、今回戯曲を読んだ時に、“これは何も起こらなすぎるから、もう少しケレン味があったほうがいいのではないか”と思って(笑)、料理をしながら会話してみようかということになったんです。実際にやってみたら面白かったので、これはいけるかもな、と。ただ、最初は単なる思いつきだったのが、稽古が進むうちに段々と、台本の中身にスープって題材自体が関連してくるような気がして。この作品は、東西の壁がなくなって混ざっていくとか、いろんな国がどんどん民主化して溶けてなくなるとか、グローバリズムとか、そういう境界が曖昧になって緩くなっていくという話だから、この作品でスープをつくる演出はあながち主題と大ハズレではないのではないかと思って。
――なるほど。稽古では実際に鍋を火にかけて、切った野菜を煮ていますよね。本番で作ったスープが振る舞われることは……。
柴:ないと思います(笑)。もっと食べられないようなものにするかもしれないし、できあがらないかもしれないし。ストーリー的には、スープをずっと待ってる人たちの話なので、完成しなくてもいいと思いますし。
