本番まで1カ月を切った、2月下旬の某日。ままごとの新作『スイングバイ』の稽古が行われている横浜・急な坂スタジオを訪れた。
稽古開始から最初の1時間は、出演者の間に柴幸男も混ざって、二人一組での念入りなストレッチ。その後、円陣を組み、体形を変えながら、声を掛け合っての鞄パスが始まった。
その様子は……そうそう、運動部の練習風景にちょっと似てる!
スタッフとの打ち合わせや台本の手直しで多忙な柴に代わり、稽古の合間を縫って12名の出演者たちが、気になる新作について語ってくれた。
取材・文=熊井玲
1. 柴さんは“作・演出”番長 !?
まずは、いしお、菊地明香、島田桃依、鈴木燦、能島瑞穂、野津あおいの6人が登場。奇しくも、語り口も佇まいもマイペースな6人がそろったようで、話はゆるゆると進んでいき……。
● 「ままごと」参加のきっかけは?
菊地 『御前会議』で初めて柴さんの演劇を観て、新しくて面白いことをやってる人がいる、出たい出たい!と思って。
島田 私は『わが星』を観て。観てるうちにすごく楽しくなってきちゃったんです。すごい練習したんだろうなって伝わってきたし、でもどんな稽古をしてるんだろうというのがごく気になって、柴さんの演出を受けてみたくなって。
いしお 菊地さんと同じく、僕も『御前会議』がきっかけです。その時はまだ柴さんの名前も知らなかったんですけど、『御前会議』の後、できる限り柴さんの芝居を観に行くようになって。面白い芝居はいっぱいありますけど、出てみたい芝居は初めてだったので、なんとかこの現場に潜り込みたいと。潜り込めてよかった(笑)!
能島 私は青年団員で、2年前に柴さんが青年団に入ってきたころに、事務所に置いてあった『反復かつ連続』の台本を読んだんですね。それがすごく完成された、音楽性のある台本だったので、これはすごい、ぜひ一緒にやってみたいと思って、「いつか出させてください、どんな役でもいいので」って、柴さんの顔を見るたびにお願いしてて(笑)。それが今回やっと叶いました。
鈴木 僕は、友達から噂を聞いて『反復〜』の映像を見たんですけど、すごくすてきなセンスの人が現れたなと。オーディションの話も友達から聞いて、受けることにしました。
野津 私は『少年B』を観ていて、作品も好きだなと思ったんですけど……それ以上に、アフタートークとかで柴さんを観る機会があるじゃないですか。一見、おとなしそうな人なんだけど、実際はすごくよくしゃべる、しかも面白いことを言う人なので(笑)、「面白そう、どんな人だろう」と気になって。オーディションの時は、台本を使ってみんなで動いて、稽古みたいな内容で楽しかったですね。
いしお 僕もすごく面白かったです。柴さんの稽古を受けられて、うれしかったし。
野津 うん、確かに得した気分になったよね。
島田 私は実は結構キツくて(笑)。ほかの人は頭の回転が早くてすごいなーって思ってました。いしおさんや(板倉)チヒロさんが一緒の回だったんだけど、2人は反応が早くてすぐに動けるのに、私はずっと棒立ちで壁の前で固まってて(笑)。
鈴木 そういえば柴さんが、「すごくよく動ける人と動けない人の両方を取った」なんて言ってましたよ(笑)。
● 稽古の進み具合は?
鈴木 始めのうちは、組み体操をやってて、一回やらなくなったんですけど、昨日また復活しました。
島田 鈴木さん、組み体操番長だもんね!
鈴木 そうなんです(笑)。組み体操のこと何も知らないんですけど……。
全員 (笑)
野津 私は「よし、やろう」番長二代目です。休憩後に、「よし、やろう」って合図する役。
菊地 でもなかなか「よし、やろう」って言わないから、“二代目”になっちゃったのね(笑)。
野津 そう(笑)。
鈴木 僕は……
菊地 おなら番長!
鈴木 それは単におならするってだけだから(笑)! 僕も最初は「よし、やろう」番長だったんですけど、勢いがないからか、番長じゃなくなっちゃった……。
全員 (笑)
能島 私とはるちゃん(菊地)は歌番長で、歌のシーンを担当してます。
いしお 僕はまだ番長じゃないです。
島田 私も。でも掃除番長か洗濯番長とか、本番中に何かやろうかなあ。
能島 稽古では、組み体操にしろ歌にしろ、柴さんがもってきたいろんなアイデアを、番長を中心に毎日みんなで試しています。私も、いまでこそみんなで声掛け合って稽古できるようになりましたけど、最初は体育会系っぽい雰囲気に慣れなくて、声を出すだけで数日かかっちゃった(笑)。でも徐々にチームワークに参加できるようになってきて。いま、組み体操とか歌の練習にすごく時間を割いてるんですけど(笑)、はたからみたら「何やってるの?」って思われそうなその時間が、役者たちの結束力を高める時間になってるんだって、自分も参加できるようになってから強く感じるようになりました。
野津 私は今でもたまに、「ナイス!」って声掛け合いながら笑顔か張り付いちゃう時、あるけどね(笑)。確かオーディションの募集チラシだったと思うんだけど、「僕とままごとしましょう」って書いてあったんです。「やるやる! 私もままごとやりたい!」って気持ちで今回参加しているので、稽古なんだけど、どこかずっとみんなと遊んでる感じ。だから稽古がすごく楽しいです。
● 『スイングバイ』の意味は?
野津 「回転」、かな(笑)?
鈴木 「変換および勢い付け」みたいなイメージがあります。
能島 台本上ではシーンが変わる時に「スイングバイしながら飛ぶ」とあって、シーン転換の意味もありますよね。
いしお 稽古場で使ってる「スイングバイ」にはいくつかの意味があると思うんです。単純に「回転」って意味もあるし、「空間が飛ぶ」みたいな意味もあるし。
鈴木 スイングバイ航法といって、惑星の重力を利用して勢いをつけ、宇宙船が進むという航法があるんです。柴さんは、その動力と役者たちのチームワーク力とを重ねて考えているんじゃないかな。
菊地 「より遠くへ」という感じ。一回飛んだ星が、また次の星の重力でどんどんより遠くへ飛んで行く、そのイメージもあるんじゃないかな。
能島 ……って話を前にみんなでしたこと、すっかり忘れてた(笑)。
● 柴幸男はどんな演出家?
菊地 いろんな番長を決めすぎたせいか(笑)、現時点ではみんなと一緒というか、あまりみんなより前に出ようとしていない気がします。
能島 組み体操も歌も一緒にやってるから、なんだか一列に並んで一緒に稽古してる感じですよね。
鈴木 ああ、じゃあ柴さんは作・演出番長だ!
全員 ああ〜(笑)。
● 今回の自己目標は?
野津 私は子供の頃から協調性がなくて通知表にもマイペースって書かれてたんですけど(笑)、今回は協調性を鍛えようと思ってます(笑)。
鈴木 僕は協調性はだいぶあきらめてきたので(笑)、あとは自分もみんなも楽しめるように。
いしお みなさんが怪我なく千秋楽を迎えられることですね。あと、皆さんとできるだけ仲良くなれたらいいなと思ってます。
島田 私はまず、組み体操で上に乗るのでダイエットして(笑)、それと動きが鈍いので、もっと動けるようになること。あと最後にみんなで温泉に行きたい。終わったら絶対に寂しくなると思うので。
菊地 私は悔いが残らないようにやりきりたいです。
能島 アンサンブルに徹するということを、役者として試してみたいです。せっかくそういう作りになっている作品だし、どこまでそれができるのか、ぜひ試したいですね。

